個人再生手続
平成13年4月から改正民事再生法が改正され、新たに「個人債務者再生手続」が導入されました。民事再生法(平成12年4月施行)の個人版です。
多重債務に困窮する人々にとって、平成12年2月に施行された「特定調停手続」に続いて、さらに利用しやすいメニューが追加されたことになります。
簡単に言ってしまえば、この手続きは、定期的収入のある者について、ある程度の可処分所得を吐き出させることにより、その余を実質的に免責しようとするものであり、また、住宅ローンを抱えている多重債務者が、何とか住宅を手放さないで再生する方法を定めたものであります。
つまり、この手続きを利用すれば、破産することなく(つまり財産を処分することなく)、経済的な再建が可能になるわけです。
ただ、法律的には、複雑でややこしい規定になっており、クリアしなければならないハードルも少なくありません。
この手続きを利用したいと考えているのであれば、まず、この手続きの概要を知っていただき、そのうえで司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。
当ホームページでは、様々な角度からこの制度について紹介させていただきたいと考えています。
Q1.個人債務者再生手続はどのような理由で創設されたのですか?
Q2.小規模個人再生に関する特則の概要を教えてください。
Q3.給与所得者等再生に関する特則の概要を教えてください。
Q4.小規模個人再生か給与所得者等再生か、その選択基準を教えてください。
Q5.住宅資金貸付債権に関する特則の概要を教えてください
Q6.自己破産手続との違いは何ですか?メリットとデメリットを教えてください。
Q7.特定調停手続との違いは何ですか?メリットとデメリットを教えてください。
Q8.小規模個人再生と給与所得者等再生との違いは何ですか?利用できる対象はどう違うのですか。
Q9.住宅ローンが3000万円残っています。それ以外の借金が2500万円ありますが、
個人債務者再生手続きの利用はできますか。
Q10.借金がだいたい消費者金融業者に450万円くらいあります。
このうちのどのくらいを返済すればいいのでしょうか。
Q11.住宅資金貸付債権に関する特則を利用すれば住宅を手放さずにすむと聞きましたが、
どんな場合に利用ができるのですか。
Q12.個人再生委員とはどういう役割をする人なのですか?どういう場合に選任されるのですか?
Q13.小規模個人再生手続きの流れを教えてください。
Q14.給与所得者等再生手続きの流れを教えてください。
Q15.住宅資金貸付債権に関する特則を利用したいと考えていますが、
住宅ローン債権者と事前に協議を持たなければなりませんか?
Q16.住宅ローンについて、保証会社がすでに代位弁済をしてしまっていますが、
住宅資金貸付債権に関する特則を利用することはできますか?
Q17.「清算価値保障の原則」とは何ですか?
Q18.給与所得者等再生における「可処分所得基準」とは何ですか?
これは、ご承知のとおり、「そごう」で有名になった民事再生法の改正として位民事再生法は、平成10年9月、当時の中村法務大臣の、倒産法改正の重要部分を前倒しすべきという指示により、中小企業等を主たる対象とする再建型倒産処理手続として平成12年4月に施行されました。
民事再生法は、法律構成上は、個人(非事業者を含む)、零細企業から各種法人、大企業まで幅広く門戸を広げ、破綻の前段階においても再生手続開始申立てができるようになり、再生手続開始前の財産保全制度も充実させました。
また、再生計画の可決の要件も、再生債権者数および議決権総額の2分の1以上で足りるものとし、再生債権者表の記載に確定判決と同一の効力を持たせるなど、履行確保も配慮され、全体として利用しやすく、柔軟な手続となりました。
そのような意味においては、従来の和議法の制度的欠陥が大きく改善されてはいますが、実際問題としては、小規模の負債を抱えた個人債務者が利用するには未だ重厚長大な手続であることは否めませんでした。
そこで、4月から施行された改正民事再生法は、「小規模個人再生に関する特則」「給与所得者等再生に関する特則」「住宅資金貸付債権に関する特則」等を定め、個人債務者が簡易に再建を図る規定を整備しました。
これにより、住宅ローンやその他負債を抱える個人債務者が、住宅ローンを支払いながらその他の負債を整理する途が開かれたのです。
したがって、この手続は、小規模な個人事業者が主体となると考えられます。
裁判所は、必要があるときは、開始決定と前後して個人再生委員による調査を命じることができ、再生債権の評価の申立てがあったときは必要的に命じることとなります。
個人再生委員は、再生債務者の財産および収入の状況の調査等、一定の権限が与えられますが、その給源としては、司法書士も予定されています。
また、再生債権については、再生手続開始申立て時に提出された債権者一覧表を中心に調査手続が進められ、争いある再生債権については裁判所が評価決定をすることになります。小規模個人再生には否認権の規定は適用されません。
再生計画で定める弁済期間は、再生計画認可の決定の確定の日から3年間でなければなりませんが、特別の事情のある場合には5年まで伸長することができます。
また、再生計画に基づく弁済の総額は、無異議債権および評価済債権の総額の5分の1または100万円のいずれか多い額を下回ってはなりませんが、無異議債権および評価済債権の総額が100万円を下回っているときはその同額を、無異議債権および評価済債権の総額の5分の1が300万円を超えるときは300万円を下回ってはなりません。また、無異議債権および評価済債権の総額が3000万円を超え5000万円以下の場合、その10分の1を下回ってはなりません。
小規模個人再生における再生計画案の可決要件は、再生計画案に同意しない旨を書面で回答した議決権者が議決権者総数の半数に満たず、かつ、その議決権の数が議決権者の議決権の総額の2分の1を超えないことで足りるとされています(消極的同意)。
小規模個人再生においては、再生計画認可の決定の確定によって再生手続が終結します。ただし、再生計画認可の決定があった後、やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難となったときは、再生計画で定められた債務の最終の期限から2年を超えない範囲で弁済期限を延長する手続も定められているほか、計画遂行が極めて困難となった場合には、変更された再生債権額の4分の3以上の弁済を終えているなどすれば、その余について免責をする手続も備えています(ハードシップ免責)。
給与所得者等再生を利用し得る債務者は、小規模個人再生を利用し得る債務者のうち、給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれる者であります。したがって、給与所得者が主な主体となると考えられます。
提出された再生計画案について、裁判所は届出再生債権者の意見を聴いた後、再生計画認可の決定をする(同意不要)とされています。
再生計画で定める計画弁済総額は、原則として、再生計画案の提出前2年間の再生債務者の収入からこれに対する所得税、住民税および社会保険料に相当する金額を控除した額を2で除した金額から、再生債務者およびその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するために必要な1年分の費用の額を控除した額に2を乗じた額であることが必要です。
すなわち、手取収入から最低生活費を控除した額の概ね2年分の金額を3年(または5年内)で弁済を行う計画となります。
しかし、給与所得者等再生の申立要件を満たしていれば機械的に当該手続を選択するのではなく、債務者の実際の生活状況と予想される再生計画とを慎重に勘案し、あえて小規模個人再生を選択すべき場面も多いものと想定されるところです。
つまり、給与所得者等再生が再生債権者の同意を要せずに再生計画が認可されるのと引き換えに、再生計画期間内に弁済すべき債権額が機械的に算出されるのに対し、小規模個人再生では再生債務者の事業または生活を考慮して再生計画を立案できることと引き換えに再生債権者の消極的同意が認可の要件とされているからです。
そのため、実際の生活実態を考慮した場合、給与所得者等再生において機械的に算出された再生計画を遂行することが困難であるケースが想定され(子供が進学を控えていたり、家族の医療費が生活費を圧迫する、再生債権とは別に一般優先債権(滞納している社会保険料等)を並行して弁済しなければならないなど)、このような場合には再生債権者の消極的同意を得るというリスクを冒してでも小規模個人再生を選択することになるものと考えられます。
また、住宅資金特別条項を定める場合には一般の再生計画で定めた弁済と住宅資金特別条項で定めた弁済の双方を履行する必要があるので、この場合にも給与所得者等再生において機械的に定める再生計画では履行が不能となる蓋然性が高い場合も想定されます。
したがって、この場合にも、再生債権者の消極的同意が得られるのであれば小規模個人再生を選択すべきであろうと考えられます。
再生債権のうちに住宅資金貸付債権を含む再生計画においては、原則として、再生債権者の有する住宅資金貸付債権の全部または一部を変更する再生計画の条項(住宅資金特別条項)を定めることができます。
この場合、住宅資金貸付債権の保証会社が保証債務を履行した場合には、当該履行をした日から6カ月を経過する日までの間に再生手続開始の申立てがされた場合に限り、当該保証債務は初めから履行されなかったものとみなすことができ(巻戻し)、巻戻しされた債権について住宅資金特別条項を定めることができます。
住宅資金特別条項においては、再生計画認可の決定の確定時までに弁済期が到来する住宅資金貸付債権の元本(再生債務者が期限の利益を喪失しなかったとすれば弁済期が到来しないものを除く)、およびこれに対する再生計画認可の決定の確定後の住宅約定利息並びに再生計画認可の決定の確定時までに生じる住宅資金貸付債権の利息および不履行による損害賠償金全額を、住宅資金貸付債権以外の再生債権について再生計画で定める弁済期間内(当該期間が5年を超える場合は再生計画認可の決定の確定から5年)に支払うことになります。
また、再生計画認可の決定の確定時までに弁済期が到来しない住宅資金貸付債権の元本(再生債務者が期限の利益を喪失しなかったとすれば弁済期が到来しないものを含む)およびこれに対する再生計画認可の決定の確定後の住宅約定利息は、住宅資金貸付契約における債務の不履行がない場合についての弁済の時期および額に関する約定に従って支払うことになります。
しかし、住宅資金特別条項を定めた再生計画を遂行することが著しく困難である場合には、住宅資金特別条項において住宅資金貸付債権に係る債務の弁済期を住宅資金貸付契約において定められた最終の弁済期から後の日に定めたり、住宅資金貸付債権以外の再生債権について再生計画で定める弁済期間中は、住宅資金貸付債権の元本の一部の返済を猶予する計画を定めることができます(リスケジュール)。
さらに、住宅資金貸付債権の債権者の同意がある場合には、より柔軟なリスケジュールをすることも可能となっています。
住宅資金特別条項を定めた再生計画案が提出されたときは、裁判所は、住宅資金特別条項によって権利の変更を受ける者の意見を聴くこととなりますが、住宅資金特別条項によって権利の変更を受ける者および保証会社は、住宅資金貸付債権または住宅資金貸付債権に係る債務の保証に基づく求償権である再生債権については議決権を有しません。
住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の決定が確定したときは、住宅資金特別条項によって変更された後の権利は、当該住宅資金貸付債権を担保するために設定された抵当権や、再生債務者の連帯債務者、保証人等に対しても効力が及ぶことになります。
清算手続きである以上、お金に換えることができる財産(主として不動産や生命保険の解約返戻金など)については、換価して債権者へ配当しなければなりません。これは当然のことです。
したがいまして、住宅を所有している人が利用したいということであれば、この処分が大前提となります。
一方、個人債務者再生手続きは、同じ倒産手続きではあるものの、破産手続きのような清算型ではなく、再建型と呼ばれており、原則として、財産の処分は前提となっていません。
もちろん、抵当権などの優先権を持つ債権者につきましては、別除権者としてその抵当権の行使は制限されていませんから、自宅に住宅ローン債権者の抵当権が設定されている場合、最終的には競売の申立により、自宅を失わざるを得ないこととなってしまいますが、今般の法改正により新たに創設された「住宅資金貸付債権に関する特則」を利用することにより、自宅を手放すことなく債務整理をすることが可能となりました。
ただし、この住宅資金貸付債権に関する特則を利用できるケースは法律によって厳格に限定されていますので、その点についてはご注意いただきたいところです。
つまり、自己破産の場合は、自宅の処分が前提となりますが、個人債務者再生手続きの場合は、「住宅資金貸付債権に関する特則」の利用が可能な場合においては、自宅を手放すことまでは要求されていないということになります。
また、破産による各種の資格制限(会社役員、保険外交員、警備員など)は、個人債務者再生手続きにはありません。
次に実質的に免除される債務の割合ですが、破産手続きは、浪費などの免責不許可事由に該当することがなければ全額が免責されますが、個人債務者再生手続きによりますと、最低弁済額基準などを満たした額を支払うことによって、一定の割合により、その余が免除されるということになります。
利息制限法への引き直し計算を行い、残った元本につき、将来の利息を免除してもらうことによって、3年程度の分割払いにより、その全額を支払う合意をするのが一般的です。
ただし、あくまで個々の債権者との話し合いによる合意がベースになっていますので、強硬な姿勢を崩さない債権者には強制力がありませんので、1社でもそのような債権者がある場合、結果として他の債権者との話し合いにも影響を及ぼすことになってしまい、解決が困難になってしまいます。
また、取引期間が長期にわたっており、利息制限法への引き直しにより元本額が相当額圧縮されるような場合は格別、元本部分までのカットは通常困難と考えられます。
その一方で、この特定調停手続きは、他の手続きに比較し、費用も非常に低廉になっており、そもそも調停手続きが法律専門職ではない一般の利用者を想定していることもあって、申し立ても簡易になっているというメリットがあります。
つまり、特定調停手続きの場合は、手続きの申し立てなどに関する負担が少ない一方において、元本までのカットは困難でありますが、個人債務者再生手続きによれば、元本部分についてのカットも可能になるということになります。もちろん、債権者の同意や裁判所の認可が必要であることは言うまでもありませんが。
利用できる対象はどう違うのですか。
そして、小規模個人再生と給与所得者等再生の関係を言えば、小規模個人再生の特則が給与所得者等再生となっており、小規模個人再生を利用できる債務者の一部が給与所得者等再生を利用できる、という構図になっています。
なお、住宅資金貸付債権に関する特則については、いずれの手続きでも併用することが可能になっています。
具体的には、小規模個人再生を利用できる債務者は、個人債務者のうち、「将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがある者」となっていますが、給与所得者等再生を利用できる債務者は、小規模個人再生の要件を満たす債務者のうち、「給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれる者」であることが必要になっています。
より具体的に言えば、小規模個人再生の対象者として典型的に想定できる債務者としては、「個人事業主」「農業者」「漁業者」「不動産業者」などが考えられ、給与所得者等再生の対象者としては、「公務員」「会社員」が考えられます。
なお、給与所得者等再生の開始要件を満たす者は、当然に小規模個人再生の開始要件を満たしていますから、公務員や会社員である債務者は、いずれの手続きを利用することも可能です。
それでは、小規模個人再生と給与所得者等再生では、手続き上、どのような違いがあるかという点につき、もっとも重要だと思われる2点について指摘しておきます。
まず、再生計画案の認可に関してですが、小規模個人再生では債権者の同意(消極的同意で足りますが)が必要ですが、給与所得者等再生では同意も不要となっています。
これは、給与所得者等再生においては、次にあげる可処分所得基準をクリアしていなければ、そもそも再生計画案は認可されないということになっていることによります。
つまり、収入から税金・社会保険料を差し引いた手取り収入から、政令で定められた最低生活費を引いた「可処分所得」の2年分をはき出すのであれば、債権者の決議に付す必要はない・・・という考え方に基づいているわけです。
二つ目は、再生計画案の認可について、クリアしなければならない基準ですが、小規模個人再生においては、・最低弁済額基準と・清算価値保障(破産をした場合よりも多くの額が債権者に支払われなければいけないという大原則)の二つですが、給与所得者等再生の場合にはこれに加え、先に述べたとおりの・可処分所得基準をクリアしていなければなりません。
個人債務者再生手続きの利用はできますか。
個人債務者再生手続きにおいては、通常の民事再生手続きを、相当部分において、簡易・合理化しているため、その利用対象者を制限しています。
将来における継続的な収入の見込みがあるということの他、負債の総額が5000万円以下であることが、ひとつの大きな制限になっています。
ただし、この5000万円の中には、住宅ローンと抵当権などの担保権が設定されており、その担保権の実行によって返済が見込まれる額を含みません。
したがいまして、上記のケースでは、住宅ローンの残額である3000万円については、債務額の計算上ではまったく考慮に入れる必要はありません。その他の2500万円についてのみ考えればいいことになります。
なお、この点については、住宅資金貸付債権に関する特則を利用する、しないに関わりません。
このうちのどのくらいを返済すればいいのでしょうか。
そして、その金額は、債務の総額によって異なっており、簡単に言えば、次のとおりになります。
債務の総額が100万円未満の場合 その全額
債務の総額が100万円以上500万円以下のとき 100万円
債務の総額が500万円を超え1500万円のとき その5分の1
債務の総額が1500万円を超え3000万円以下のとき 300万円
債務の総額が3000万円を超え5000万円以下のとき その10分の1
したがいまして、質問のケースでは、100万円が最低弁済額になるものと思われます。
ただ、注意していただきたいのは、これはあくまで最低弁済額の基準でありますから、実際にはこれ以上の返済をしていくことができる収入があるのであれば、それに見合った再生計画案を作成しなければ、債権者の同意が得られないかもしれないということです(給与所得者等再生の場合には、可処分所得基準をも満たしていれば、債権者の同意は不要です。)。
また、もう一つのハードルとして、「清算価値保障の原則」を満たす返済をする必要があるということにも注意してください。
これは、仮に自己破産手続きを選択し清算をした場合に、債権者に配当として支払われる金額を上回る返済計画案を立案しなければならない、という大原則であります。
上記のケースで、仮に清算価値が100万円を超えるとしたら、その額を上回る返済計画案を立てる必要が出てきます。詳しくは別項に譲ります。
聞きましたが、 どんな場合に利用ができるのですか。
しかし、抵当権を有しており、他の債権者と比較して優先的な地位にある住宅ローン債権者の権利行使を制限するわけですから、無制限に適用されるわけではなく、極めて限定的な場合にのみ利用が可能となっていることに、まず注意していただきたいと思います。
また、この住宅資金貸付債権に関する特則の利用が可能だということは、必ずしも、この特則を利用しての再生が可能だということには繋がりません。
と言いますのも、住宅ローンの遅滞が相当期間にわたっている場合には、高額な遅延損害金が課されることになり、それについても再生計画期間中に支払をするということはなかなか困難なケースが多いと予想されるからです。
いずれにせよ、住宅資金貸付債権に関する特則の利用が可能だと考えられる場合には、早期に司法書士などの専門家に相談し、その後遅滞なく、住宅ローン債権者との事前協議をして具体的な検討をすることをお勧めします。
それでは、次に住宅資金貸付債権に関する特則の利用の要件のうち主なものについてあげておきます。
・住宅は、再生債務者が所有しており、居住の用に供されるものであること
・住宅に抵当権が設定されていること
・その抵当権によって担保されている債権は、住宅の建設、購入、改良に必要な資金の貸付に係るものであること。
・住宅に住宅ローン以外の担保権が設定されていないこと
・住宅の敷地に住宅ローンに遅れる住宅ローン以外の担保権が設定されていないこと
どういう場合に選任されるのですか?
そして、その役割については、下記の3つに限定されています。
・再生債務者の財産および収入の状況を調査すること
・法227条1項本文に規定する再生債権の評価に関し裁判所の補助をすること
・再生債務者が適正な再生計画案を作成するために必要な勧告をすること
多くの場合、弁護士や司法書士が選任されているようです。
そして、その費用につきましても、申立をする債務者が負担することになりますが、全国的にずいぶんとばらつきがあるようです。
ちなみに、静岡では、15万円と一律になっており、3万円の5回払いまでの分割払いが許容されています。
この審尋においては、裁判所から選任された再生委員から意見が述べられ、特に問題がなければ、その場において手続きの開始決定がなされます。その際、債権者の債権届出期間や再生計画案の提出期限などのスケジュールが決定され、再生委員への報酬額の支払い方法などについても決定されます。手続きの開始決定がなされることによって、債権者に対する弁済は一時ストップをすることとなります。
開始決定後、各債権者に債権者一覧表が送付され、各債権者から債権の届出がされてきます。ただし、債権の届出をしない債権者も少なくありません。この場合は、申立時に債権者一覧表に記載された金額が届け出られた債権額とみなされることになります。
届けられた債権額に異議があれば、開始決定時に定められた異議申述期間内に裁判所に対して、異議の申立をすることになります(ただし、申立時の債権者一覧表に異議について留保する旨の記載をしておく必要があります)。債務者が異議を述べた債権額について、債権者が争う場合には、債権者から評価の申立が許されていますが、実際にはほとんど利用されていません。
こうして、各債権者の手続き内の債権額が確定することになり、いよいよ再生計画案の提出ということになります。提出された再生計画案は、各債権者に送付され、債権者の同意・不同意の書面決議に付されることになります。半数を超える債権者が不同意という意思表示をした場合には、再生計画案は不認可となります。しかしながら、現状では、ほとんどの債権者は、積極的同意の意思表示もしませんが積極的不同意の意思表示もしません。従いまして、この段階で不認可になるケースはほとんどありません。
書面決議によって債権者の同意(消極的同意も含みます)を得られた再生計画案は、再生委員の意見が付され、不認可自由に該当する事由がなければ、裁判官によって認可決定がなされます。この認可決定によって、小規模個人再生手続きは終了することになります。
しかしながら、債務者にとっては、この後に始まる再生計画の履行が本来の意味での再生手続きと言えるかもしれません。裁判所によって、認可された再生計画案は、その後、官報に公告されて2週間経過後に確定し、その翌月から実際の返済が開始することになります。
この審尋においては、裁判所から選任された再生委員から意見が述べられ、特に問題がなければ、その場において手続きの開始決定がなされます。その際、債権者の債権届出期間や再生計画案の提出期限などのスケジュールが決定され、再生委員への報酬額の支払い方法などについても決定されます。手続きの開始決定がなされることによって、債権者に対する弁済は一時ストップをすることとなります。
開始決定後、各債権者に債権者一覧表が送付され、各債権者から債権の届出がされてきます。ただし、債権の届出をしない債権者も少なくありません。この場合は、申立時に債権者一覧表に記載された金額が届け出られた債権額とみなされることになります。
届けられた債権額に異議があれば、開始決定時に定められた異議申述期間内に裁判所に対して、異議の申立をすることになります(ただし、申立時の債権者一覧表に異議について留保する旨の記載をしておく必要があります)。債務者が異議を述べた債権額について、債権者が争う場合には、債権者から評価の申立が許されていますが、実際にはほとんど利用されていません。
こうして、各債権者の手続き内の債権額が確定することになり、いよいよ再生計画案の提出ということになります。提出された再生計画案は、各債権者に送付され、債権者の意見が聴取されることになります。しかし、この意見聴取は不認可事由に該当する事由があるかどうかについてなされるもので、それ以外の意見(たとえば、「借りたものを返さないのはけしからんので不認可にすべき」など)は取り上げられることはありません。
債権者に対する意見聴取によっても不認可事由が指摘されなかった再生計画案は、再生委員の意見が付され、不認可自由に該当する事由がなければ、裁判官によって認可決定がなされます。この認可決定によって、給与所得者等再生手続きは終了することになります。 しかしながら、債務者にとっては、この後に始まる再生計画の履行が本来の意味での再生手続きと言えるかもしれません。裁判所によって、認可された再生計画案は、その後、官報に公告されて2週間経過後に確定し、その翌月から実際の返済が開始することになります。
住宅ローン債権者と事前に協議を持たなければなりませんか?
この協議をせずに申立てをしても罰則等はありませんが、当然のことながら、住宅ローン債権者の心証も悪くなるでしょうし、それが再生計画案の作成にも影響を及ぼすことになります。
従いまして、事前に、住宅ローン債権者と協議をしておき、概ねの理解を得た上で再生の申立を行い、申立後に再び協議を重ねた上で、住宅資金特別条項について詰めていく・・・というのが本来のあり方と言えます。
協議にあたっては、事前にアポイントを取り、参考として次にあげるような書類を用意していけば良いでしょう。司法書士に依頼している場合は、司法書士に同行してもらうべきです。
・給与明細書(過去5ヶ月程度)本人及び同居者
・源泉徴収票(過去2年)本人及び同居者
・市県民税課税証明書(過去2年)本人及び同居者
・債権者一覧表
・家計収支表
協議の内容としては、収入と支出を照らし合わせ、住宅ローン以外の債権(再生計画案の認可によって縮減される予定の総額)を3年で分割返済した場合に、住宅ローンについて現状通り支払っていけるかどうか、支払っていけない場合に期間を延長できるかどうか、期間延長をした場合に毎月の支払いがどのくらいになるか、それなら支払っていけるかどうか・・・などを検討することになります。
住宅資金貸付債権に関する特則を利用することはできますか?
しかしながら、代位弁済がされてしまってから、長期間が経過しているものについては利用できず、住宅ローン債権の全額が代位弁済された日から半年以内に申立をしなけれないけないことに注意する必要があります。
また、この住宅資金貸付債権に関する特則の利用が可能だということは、必ずしも、この特則を利用しての再生が可能だということには繋がりません。
と言いますのも、住宅ローンの遅滞が相当期間にわたっている場合には、高額な遅延損害金などが課されることになり、それについても再生計画期間中に支払をするということはなかなか困難なケースが多いと予想されるからです。
いずれにせよ、住宅資金貸付債権に関する特則の利用が可能だと考えられる場合には、早期に司法書士などの専門家に相談し、その後遅滞なく、住宅ローン債権者との事前協議をして具体的な検討をすることをお勧めします。
小規模個人再生の場合も給与所得者等再生の場合もこの原則が働きます。
債権者からの視点で見てみれば、債務者が破産をした場合には、一括で配当金を得ることが出来るのに対して、この個人再生手続きによれば、原則3年の分割払いを余儀なくされるわけですから、少なくとも破産の場合よりも債権者に多くの返済金が払われることが必要であるという考えによります。
従いまして、この手続きを選択する場合、まず、仮に破産した場合の清算価値を計算する必要があります。
不動産を所有している場合には、その不動産の時価(不動産業者から簡易な査定書を作成してもらってください)からその不動産に設定されている抵当権の被担保債権額(つまり残債務額)を差し引いたものが清算価値となります。
預貯金はその額、生命保険の場合には、解約返戻金の額、自動車の場合は、自動車の時価(中古自動車屋の査定書を作成してもらってください)からローンの残債務額を差し引いたものが清算価値となります。
退職金は仮に退職した場合の退職金の4分の1又は8分の1相当額(裁判所によって取扱いが異なります)が清算価値となります。
これらの清算価値の合計額が、仮に120万円だったとすれば、再生計画案は、この金額を上回る支払総額を設定しなければなりません。
そして、この基準が満たされているからこそ、給与所得者等再生の場合は、債権者の同意不同意の賛否さえ問われずに手続きが進行されるのです。
つまり、給与所得者である債務者は、年収の2年分から、2年分の所得税・住民税・社会保険料を引いた手取り収入から2年分の最低生活費を差し引くことによって、処分の可能な所得が算出されることになります。
これが「可処分所得」と言われるものですが、この2年分を3年で分割返済に充てることによって、その余を免責されるというものです。
ここから、「精一杯の金額を返済に回すのであるから、債権者の賛否を問わない」という考え方が導かれるのです。
なお、この最低生活費は、生活保護基準に倣って政令で定められた計算式によって算出されるもので、実際の最低生活費とは異なってきますから注意が必要です。
特に、独身の人は、最低生活費が少なくなっており、それに伴って可処分所得が多額となりますから、給与所得者等再生を選択するメリットは少なくなるケースが多いのが現実です。
そして、給与所得者等再生手続きを選択する場合、その再生計画案は、可処分所得の2年分の金額を上回る支払総額を設定しなければなりません。